【 行動経済学(プロスペクト理論) 】






概 要

従来的な経済学では、人は合理的と仮定するが、人は必ずしも合理的ではありません。

行動経済学(Behavioral economics)は、実際の人間による実験やその観察を重視し、人間がどのように選択・行動し、その結果どうなるかを究明することを目的とした経済学の一分野です。

心理学の影響を強く受けており、従来的経済学における人間の合理性を部分的に認めつつも(限定合理性)、人間の認知の傾向や心理的バイアスがどの様に経済行動における意思決定や市場価格に影響を与えるかに注目して新たなモデルを作成しています。






プロスペクト理論

・行動経済学における代表的な理論。

・最適解を求めることよりも、現実の選択がどのように行われているかをモデル化することを目指すものです。

・個人が損失と利得をどのように評価するのかを、実験などで観察された経験的事実から出発して記述する理論です。

・損失回避性と感応度逓減性からなります。





損失回避性

同じ額でも自分の「利益」と「損失」では「損失」の方がより強く印象に残り、それを回避しようとする行動をとる事を示しています。これを行動経済学では損失回避性と言います。

プロスペクト理論の元となった実験は、「一つだけの質問による心理学」と呼ぶ手法によります。

例えば、以下の二つの質問について考えてみます。

質問1 : あなたの目の前に、以下の二つの選択肢が提示されたものとします。


選択A : 1000万円が無条件で手に入る。


選択B : コインを投げ、表が出たら2000万円が手に入るが、裏が出たら何も手に入らない。

質問2 : あなたは2000万円の負債を抱えているものとする。

そのとき、同様に以下の二つの選択肢が提示されたものとします。


選択A:無条件で負債が1000万円減額され、負債総額が1000万円となる。


選択B:コインを投げ、表が出たら支払いが全額免除されるが、裏が出たら負債総額は変わらない。

質問1は、どちらの選択肢も手に入る金額の期待値は1000万円と同額であるにもかかわらず、一般的には、堅実性の高い「選択A」を選ぶ人の方が圧倒的に多いとされています。

質問2も両者の期待値は1000万円と同額である。


安易に考えれば、質問1で「選択A」を選んだ人ならば、質問2でも堅実的な「選択A」を選ぶだろうと推測されます。

しかし、質問1で「選択A」を選んだほぼすべての者が、質問2ではギャンブル性の高い「選択B」を選ぶことが実証されています。

この一連の結果が意味することは、人間は目の前に利益があると、利益が手に入らないというリスクの回避を優先し、損失を目の前にすると、損失そのものを回避しようとする傾向があるということであります。

質問1の場合は、「50%の確率で何も手に入らない」というリスクを回避し、「100%の確率で確実に1000万円を手に入れよう」としていると考えられます。


また、質問2の場合は、「100%の確率で確実に1000万円を支払う」という損失を回避し、「50%の確率で支払いを免除されよう」としていると考えられます。



感応度逓減性

同額であっても損失の方をより強く感じる事に変わりは無くとも、損失・利益共に額が大きくなればなるほどその感覚が鈍ってくる事も実験によって分かっています。これを感応度逓減性と言います。

例えば5万円の釣り竿だと買うかどうか悩みますが、家を4000万円で買った時にプラス10万で、風呂をジェットバスにしてテレビつけますと言われれば・・・

「5万円の釣り竿を買うか悩む」という人間行動は、当然その物に5万円の価値があるかという価値判断を行っているということです。


しかし、金額の大きな物を購入した時には必要性はあんまり感じなくとも10万円をポッと出せる人が多いという事です。

何故ならば、感応度逓減性が働いているから。

つまり、4000万払うんだから4000万も4010万も変わらだろう。という考えです。



FXや株式投資でも損失・利益に対する考え方にも応用できます。